Animal People2-変改

□10.つるっとした関係
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 10月に入って気温が下がり、絶好の行楽日和になってきていた。三上園では今度の日曜日に出かけることになっているのだが、行き先がなかなか決まらなかった。広い公園で秋を満喫したい人と少し早くスケートに行きたい人とで、意見が割れていたのだ。3日前になっても収拾がつかないので、赤木先生は優一達に助けを求めた。
「え、今度の日曜日?急だね。僕は大丈夫だけど。他の兄弟にも聞いてみるよ」
結果は泉と晶以外は行けるということだった。泉は冬華が来るので他の場所へ出かけるため、晶は勉強が忙しいため、今回は断ってきた。優一はそれを伝えた後、赤木先生に聞いた。
「場所は全く別々の場所にするの?」
「いいえ。公園の中にスケート場があるところがあるから、行き帰りは一緒。途中だけ別行動」
「そっか、よかった。今回は園に行けないと思うから、朝行く時間だけ教えて」
「前と同じ。7時半少し前に」
「わかった。じゃあ、次の日曜日に」
優一は電話をきると、行く人達にそのことを伝えた。
「優一、持ち物とかは?」
「そういえば聞き忘れた。でも特に何をとは言ってないから、外に出かけるときと同じでいいと思う。けど、スケート場だから上着と手袋は持っていくべきだと思うな」
「あとは各個人の必要な物、というところか」
「そうだね。どうしてもわからないことは電話で聞こう」
というわけで、日曜日は忙しくなりそうだった。
 日曜日になるまで結局電話はしなかった。当日は前と同じように、早めに朝食を取り、片付けや洗濯をすませた。7時過ぎには家を出て、7時半前には園に着いた。今回はあまり遠出ではないので、荷物は少なく、前回のような混乱は起こってなかった。荷物の確認がすんだ子供達は、思い思いの人としゃべったり、じゃれあったりしていた。でも一応2つの組に分かれているようだった。優一は子供の1人に声をかけた。
「なあ、どういう風に並んでいるんだ?」
「スケート組と外組みで分かれてるはずだけど。あ、あのね。スケート組みは青いバンダナ外組は赤いバンダナをしているよ」
「そうか、ありがとう」
優一はそう言うと、3人に向き直った。
「どうしようか」
「もう少し待ってよう。もうすぐ荷物確認がすむみたいだから。わかってない僕達が手を出さないほうがいい。こんなにたくさんいるから」
新矢が言い終わる頃、赤木先生と麗が外に出てきた。2人は4人にかけ寄った。
「今日はごめんね。突然な話で。麗1人に任すのがさすがに不安だったから。20人以上いるからね」
「で、僕達はどうすればいいの?」
「2つに分かれてもらって、私か麗についてきてほしい。で、麗には必ず優一がつくことが条件」
4人は少し驚いた。全員同じ場所に行くつもりだったからだ。とにかく気を取り直して、新矢が口を開いた。
「どうしようか。優一は決まってるけど…麗ちゃんと一緒にいくもう1人を決めよう。誰
がいいかな」
「僕が行こうか」
名乗りを挙げたのは零である。
「だけど大丈夫か?年上の僕が行ったほうがいいんじゃないか?」
「前に一緒に遊びに行ったから、少しでも顔を知られてると思う。そのほうが安心だしそれに、年の差は1歳だけだよ」
零はにっこり笑った。新矢は少し不安げだった。
「新矢兄さん、それがいいよ。どうしても麗ちゃんのほうに負担がかかるから、少しでもわかる人のほうがいい」
竹流に言われて、新矢は折れた。分かれたところで、赤木先生が話を始めた。
「みんな静かに、班ごとに並んでくださいね。早くね」
子供達は混乱することなく分かれて、赤木先生に注目した。
「はい、今日は遠足の日です。場所は2つに分かれてしまいましたが、それぞれ楽しみましょう。さて、2つの場所に分かれるため、手伝いの人が来てくれました。今回は名前だけを言ってもらうことにしましょう」
赤木先生は4人に合図をした。4人は赤木先生の横に並び、それぞれ名前を言っていった。それがすむと赤木先生は話を進めた。
「新矢君と竹流君は先生と一緒に外組みのほうについてきてくれます。優一君と零君は麗姉さんと一緒にスケート組みについてきてくれます。皆さんあいさつしましょう」
子供達は大きな声でよろしくお願いしますと言った。4人はにっこりと笑った。いつもの通り麗が注意を言うと、園を出た。
 駅まで歩き、電車に20分ほど揺られると最寄り駅に到着した。前回動物園に行ったときとは違い、電車での移動時間はかなり短かった。しかし歩く時間は逆に長くなった。スケート場が公園の奥にあるためだ。みんなは話したりしながら歩いた。そのため、列が長くなってしまい、赤木先生、麗と新矢達は、誰かがはぐれないよう気をつけた。
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