Animal People2-変改

□1.婚約者からのSOS
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 5月下旬、暖かく爽やかな日が続く。この頃には、新矢達は普通の生活を取り戻していた新矢も元気に会社に通っていった。そんな新矢の会社にちょっと変わった電話がかかってきた。取ったのは違う人だったが、新矢に用があるらしく、新矢は電話を取った。
「はい、成田ですが」
「新矢?お願い。助けて。今、廃工場に監禁されてるの」
未玲の声を聞いて新矢は驚いた。
「未玲!?どういうことなんだよ」
「よくわからないけど、いきなり車に乗せられて気付いたらここにいたの」
未玲はできるだけ小さい声で新矢に言った。辺りを少し警戒しているのだろう。
「どこかわからないか?」
「うん…あ、誰か来る。ごめん、今は切るね」
未玲はそう言ったかと思うと電話を切った。新矢はすぐに時計を見た。今、ちょうど2時を指している。新矢は今日2時半に商談があるのだ。もう出なければいけない時間である。新矢は迷ったが、仕事の用具をまとめると会社を出た。泉に連絡してこの辺りの廃工場を教えてもらった。どことなく、どの辺りにいるのかわかっていたので、その辺りにある3つに的をしぼった。リミットまで約15分。それまでに見つけなければ、未玲も自分も大変なことになる。新矢は気合いを入れると走りだした。
 その頃未玲はというと…ただじっと寝転がっていた。犯人はまだ未玲が目を覚ましたことに気付いていない。未玲はじっと、その時を待った。それからしばらくもしないうちに視線を感じて、未玲は少し頭を上げた。
「やっと気付いたかよ」
そう言われて、未玲は初めて犯人の顔を見た。どこかで見た気がした。男は何か言おうとしたが、言葉になる前に動きが止まった。
「貴様、いつからここに」
「つい先程から。…未玲は返してもらうよ」
新矢は素早く男の気を失わせ、未玲を縛っている縄を解いた。
「未玲、このことは高遠さんに言ってあるから、今は僕に付いてきてくれ。時間がないんだ」新矢はそう言うと未玲を抱き上げ、全速力で走りだした。
 時計の針がちょうど2時半を指したとき、新矢はどうにか相手の会社に着いた。新矢は未玲と別れ、相手が待つ部屋へとかけこんだ。新矢の様子を見て相手が驚いた。
「どうしたんですか。成田さん。そんなに急いで」
「すいません。いろいろとありまして。早速始めましょう、丸井さん」
丸井はびっくりしたが、確かに時間は時間である。早速商談を始めた。
 一方、1人取り残された未玲は父親に連絡していた。
「お父さん?ごめん、連絡が遅れて」
「無事なのか、未玲。今どこにいるんだ」
「新矢の取引先よ」
「新矢は?」
未玲の父親は怒ったような口調で聞いた。
「今商談の真っ最中」
「わかった。詳しい場所はどこだ?今から迎えにいく」
「山田工業の本社。入り口にいるね」
「わかった」
未玲はそこで電話を切った。未玲はその時、まだ気付いていなかった。自分のことを見つめる怪しい影に。
 30分過ぎる頃、商談は終了した。
「それではお願いします、丸井さん」
「わかりました。でも本当に君はうまいね」
[…そうですか?」
新矢は目をぱちくりさせた。丸井は少し笑った。
「ああ、いろんな人と話をしてきたけど、君のようなやり方をする人はいなかった」
新矢は少し顔を曇らせた。丸井はその表情を見てびっくりした。
「どうしたの?誉めてるのにそんな顔しなくても」
新矢は控えめに笑った。が、それ以上何も言わなかった。新矢が歩きだすと丸井も付いてきた。玄関には未玲と未玲の父親がいた。
「商談はうまくいったかね?」
「…はい、おかげさまで」
「それはよかった。だが未玲のことはもう少し考えるべきではないかね?」
新矢は少し首をすくめた。次の瞬間、銃声が響いた。新矢はとっさに未玲と未玲の父親をかばった。丸井はその場にしゃがみこんだ。弾は誰にも当たらなかったが、新矢はすぐに辺りを見回した。左のビルの屋上に人影が見えた。新矢はその人影に向かって殺気を放った。すると人影の動きが止まったことに未玲の父親が気付き、近くの警備員に言った。
「左のビルの屋上に誰かがいるから、早く見てきてくれ」
それから2分後、警備員が屋上に到着し、犯人は捕まった。それと同時に精神力を使い過ぎて、新矢が倒れた。丸井は驚いたが、未玲と未玲の父親は動じることもなく、新矢の体を起こした。
「完璧に疲れきってしまってるな。すまんが、少しどこかで休ませてあげてくれないか」
未玲の父親が言うと、丸井は仮眠室に新矢を運んだ。未玲はそれに付いていったが、未玲の父親は新矢を未玲に頼むと帰ってしまった。丸井は新矢を寝かすと部屋を後にした。2人きりになった部屋で未玲は新矢の横に座り、腕輪ごと右の手首をつかみ、目を閉じた。
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