Animal People3-旅立ち

□6.夏だ!プールだ!
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恵美理は少しずつ歩き出した。それを泉が追う。だんだんと深い場所に向かったため少しずつ水と触れる部位が多くなってきた。冬華は怖くて完全に恵美理にしがみつく。それを確認した恵美理は冬華を抱いたまま突然水の中に潜った。冬華は驚いてパニックになりかけた。
(大丈夫。落ち着いて)
突然響いた声に冬華は動きを止めた。
(ゆっくり目を開けて、私のことを見て)
冬華は水の中で目を開けた。ぼんやりとしていたが恵美理の姿が見えた。恵美理は間もなく浮き上がり、水面を出た。
「ほうら。全然大丈夫でしょう?今夏でとっても暑いから水の中に入ると気持ちいいでしょう」
冬華はしばらく恵美理を見つめていたがやがて小さく頷いた。恵美理の行動に驚いていた泉がそばに来た。
「大丈夫か?冬華」
冬華は頷いた。
「うん。大丈夫」
冬華はそう言うと恵美理のことを見た。見つめられて恵美理は少し驚いた。
「冬華ちゃん?」
「…お姉ちゃん。お母さんと…本当のお母さんと同じ感じがする。お姉ちゃんも力持ってる人?」
冬華の言葉に恵美理も泉もびっくりする。冬華はただ恵美理を見つめた。
「うん。そうだよ」
冬華は視線を落とした。
「やっぱりそうなんだ。お父さんの近く、いっぱいいるんだ」
冬華は恵美理に身を寄せた。そんな冬華のことを恵美理は抱きしめた。
「みんなのところに行こうか。冬華ちゃん」
「うん」
そんな訳で恵美理に抱かれたまま冬華は泉と共にみんなが遊んでいるポイントに向かった。そこは浅いところで、春彦の胸位の水位だった。恵美理は冬華に言った。
「1人で立ってみようか」
また少し冬華の顔がこわばる。その時恵美理のところに春彦が近寄ってきた。
「大丈夫。手、つなごう」
春彦は手を差し出した。
「大丈夫。みんないてくれる。怖くない」
冬華は泉のことを見た。泉はにっこり笑う。それを確認すると今度はみんなのことを見回した。みんな微笑んでいる。最後に恵美理のことを冬華は見つめた。
「大丈夫。降りてみよう?」
冬華は小さく頷いた。恵美理は冬華をゆっくりプールへと下ろす。その冬華の手を春彦が握った。そしてどうにか冬華はプールに降り立った。
「どう?まだ怖い?」
「うん。少し。でも、大丈夫そう」
みんなはにっこり笑った。
「やっとみんな揃ったね。じゃあ、みんなで遊ぼう」
零の言葉にみんなが頷く。まずは持っていたビーチボールを使って遊ぶ。その後泳いだり、追いかけっこしたりして遊んだ。最初は恐る恐る動いていた冬華も次第に普通に水の中で動いていた。そしてこのプールの目玉であるウォータースライダーにも挑戦した。最初はやっぱり怖がっていた冬華だが、恵美理とともに滑った。しかしさすがにこれは怖かったらしい。しっかりとその後しばらく恵美理にしがみついていた。いっぱい遊んで4時頃にはプールを出た。そして着替えて、みんなでお茶をする。
「あー、楽しかった。久しぶりに遊んだって感じだな」
「晶兄さん、かなりはしゃいでたもんね」
優一の言葉に春彦が微笑む。
「そこで笑うなよ。春彦」
「すいません」
「冬華ちゃんはどうだった?楽しかった?また来たいと思う?」
恵美理に聞かれ冬華は少し考えた。
「楽しかった。だけど…滑り台はちょっとやだ」
みんな少し笑う。そんな冬華の頭を泉は撫でた。
「まあ、どうにか水にも慣れたし。よかったな」
「うん!」
冬華が笑った。みんなのほうが少し驚く。その様子を微笑ましく恵美理は見つめた。
 5時頃にはお茶を終え、みんなは家路に着いた。遊び疲れたのか春彦も冬華もぐっすり眠っていた。泉と望は2人のことを見つめた。
「いろいろあったけど楽しかったわね。私、心臓弱かったらからプールの思い出ってあまりないの。だからなおさら楽しかったかも」
「そっか。よかったな。だけどあそこまで冬華が水だめとは思わなかった」
望が苦笑いをする。
「それは私も。でも、もう大丈夫でしょ。楽しかったって言っていたし」
「そうだな」
泉は頷くと横に視線を向けた。冬華の隣に恵美理が座っていた。
「恵美理ちゃん」
泉に呼ばれ恵美理は泉を見た。
「今日は冬華の相手してくれてありがとね」
「いえ、別に」
恵美理は控えめに微笑んだ。
「それで、1つ聞いていい?」
「はい」
「水に潜った時冬華に何をしたの?」
恵美理はしばし黙った。
「力を使って直接心に話しかけたんです。少し驚いたようですが思ったより安心してくれました」
泉は驚いた。
「私も冬華ちゃんが持っている恐怖をどこか胸に抱えてます。だから逆にどうすれば安心感を与えられるかわかる。どうしても多用はできませんけどね」
「そっか。ありがとう。
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