Animal People2-変改

□10.つるっとした関係
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それを見送ると、次に歩けるようになった子供達が2人の周りに集まってきた。2人はまた滑り方を教えた。これを数回繰り返した。そのうち、滑れる子供が滑れない子供達に教え始めた。どんどん滑れない子供達は減っていき、最後に女の子1人になった。女の子はみんなに応援され、ついにぎこちないながらも滑れるようになった。女の子ははにかむような笑みを浮かべた。零と優一は顔を見合わせ、微笑みあった。子供達は追いかけっこをしたり、競争をしたりして遊んだ。それからまもなく、麗が子供達に声をかけた。
「そろそろ時間ですよ。リンクから上がってください」
子供達はえーという声を上げてブーイングをした。やっと滑れるようになったばかりなのでまだ滑り足りないのだ。
「でも、もう時間だよ。それにお腹すかない?」
子供達は顔を見合わせた。そのうちの1人が言った。
「お腹すいた。ご飯食べたい」
この言葉でみんなお腹がすいてたことに気付いたらしい。リンクからどんどん上がってきた。靴を履き替え、スケート靴を返すと、麗は人数を数え、外組との合流場所へと向かった。そこにはもう外組が待っていた。
「すいません。遅くなってしまって」
「いいのよ。私達も今着いたばかりだから」
赤木先生はそう言うと小さく笑った。そして子供達に向き直った。
「今から昼食にします。班ごとにまとまって食べてくださいね」
子供達は大きな返事をして早速昼食をとり始めた。4人は赤木先生と麗とともにとった。その中でそれぞれどんな感じだったか話し始めた。
「私達は観察から始めたんだけど、みんな途中から遊び始めちゃってさ。結局みんなで遊んじゃった」
「こっちは滑れない子ばかりだから、滑り方の練習からだよ。でも最後はみんな滑れるようになったよ」
「それはすごいね。そういえばこの後どうするんですか?」
「ゲームを考えてあるから、もう少し遊ぼうと思ってる。でももっと駅に近い場所に移動してからね」
赤木先生はそう言うと笑った。そのうち食べ終わった子供が遊び始めた。赤木先生と麗と4人は、その光景をうれしそうに眺めていた。食事をしている子がいなくなったところで、赤木先生が子供達に声をかけた。
「みなさん、もうそろそろ移動するので支度してください」
子供達は声に反応して荷物をまとめたり、トイレに行ったりした。そんな中、零は荷物をまとめると、ゴミ拾いを始めた。それに気付いた子供がそれを手伝った。ゴミがなくなると、赤木先生と麗と4人は、子供達を整列させた。
「これから違う場所に移動します。はぐれないようについてきてくださいね」
赤木先生が注意をすると、移動を開始した。行きと同じように、子供達はおしゃべりをしたり、じゃれたりしながら歩いていったので、また4人は大変だった。しばらく歩くと芝生の広場に着いた。
「ではここで全員でゲームをしましょう。班1つが1チームです。優勝したチームには賞品があるのでがんばってくださいね」
賞品があると聞いて子供達ははしゃいだ。赤木先生は、麗や4人に手伝ってもらいながらゲームを進めていった。○×ゲーム、しっぽ取り、イス取りゲームなどなど。全てのゲームが終了したのは3時過ぎだった。優勝したのはスケート組の1つで、賞品はお菓子袋だった。その後、参加賞としてあめだまが配られ、全員一緒におやつを食べた。おやつを食べ、支度を整えると、帰路に地ついた。子供達は疲れたのか少ししゃべる程度で、4人にとってはやりやすかった。電車に乗って少し歩くとすぐに園に着いた。帰りの会を行ない、赤木先生が今後の予定を子供達に指示すると解散となった。赤木先生は4人を園長室に呼んだ。
「今日は本当にありがとう。とっても助かったわ」
「いえ、お役に立ててよかったです」
「お礼というのはなんなんだけど、これを…」
赤木先生は小さな箱包みを差し出した。新矢は手を振った。
「別にいいですよ。いつものことだし」
新矢の言葉に他の3人もうなずいた。
「本当につまらないものだから。ね、受け取って」
赤木先生の言葉に、新矢は渋々受け取った。
「中身は入浴剤。ゆっくりと今日の疲れを癒してね」
その時、ドアを叩く音がし、麗が中に入ってきた。
「先生、こっちの仕事がすみました。後はいつもどおりでいいですか?」
「ええ」
麗は新矢の手にある箱包みを見た。
「渡されたんですか」
「今ね。さて、入り口まで送るわ」
「別にいいよ、今忙しそうだし」
優一が言ったが、2人はついてきた。去り際に赤木先生が4人に言った。
「本当にありがとう。またこんなことがあったら頼むかもしれないけど、その時はよろしくね」
4人は軽くうなずき、園を後にした。
 家に帰ると、早速お風呂を沸かし始めた。
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