Animal People3-旅立ち

□17.過去の箱の中身
1ページ/3ページ

 年明けの賑やかさから日常へと完全に引き戻される1月下旬。久しぶりに暇のできた竹流は自分のパソコンに向かった。最近あまりないとは言えどMoon Lightに関するデータがたまりにたまっていた。確認すると3年位分がたまっていた。
「わあ…さすがに全くやってなかったからすごい量。1番最古のデータなんてまだ向こうに3人で暮らしていた時のものだ」
さすがの竹流も感嘆の声を上げる。しかし気を引きしめるとデータ整理に乗り出した。まずいくつかの大きな区切りに分け、データを振り分けていった。それだけで1時間近くを消費した。少々苦笑いを浮かべる竹流。
「このままだとどれ位時間かかるかな」
しかしせっかく時間があるので、もっと大変なことになる前に竹流はどうにかしてしまうことに決めた。
 大きな区切りにしたので、次に古いデータから確認しているものといらないものに分け、月毎のフォルダーへと収めていく作業に移った。最古の記録は晶と自分で受け持ったとある人のリサーチだった。
「これは結果がすごかったな。リサーチ自体は大変じゃなかったけど、リサーチ結果にクライアントが驚いて、伸びちゃったからな」
竹流はくすくす笑いながらデータを振り分けていった。その振り分けが済むと、しばらくは人探しや物渡しなど小さい仕事がいっぱい続いた。そしてある時を境に2週間程依頼を受けていない時にぶち当たる。
「この頃か。東京に行くの行かないのって言っていたのは」
晶が東京の大学に受かり、東京に行くことになったのだが、それとともに新矢と竹流も行くか行かないかで少々もめた時期があったのである。Moon Lightを続けるとすると2人だけではさすがに無理だと判断したのだった。またそれとは別に、このままだとみんな離れ離れになり狙われやすくなるのではないかという不安があったからでもある。その頃の竹流としては晶と一緒にいることが苦痛だったので、できるなら一緒に行きたくなかった。しかし結局のところ新矢がもらったマンションに他の兄弟とともに暮らすという条件で、みんなで東京に行くことが決まったのだった。
「今となってはこれでよかったと思えるけど…あの時はな…新矢兄さんの本当の意図もわからなかったし」
感慨深げに竹流は言った。新矢はこの際他の兄弟と過ごさせることによって、自分達の問題を解決できないかと思ったのだろう。そして新矢の意図は、少し成り行きは違えど見事果たされたのだった。
「さて、どんどん次いかないとな」
竹流はまたデータの振り分けを再開する。
 晶の大学が始まる少し前の約2年と8カ月前、3人は東京に引越し、対象区域が関西から東京へと変化した。一応前もって基盤を東京へ移すと書いておいたのだが、東京に移った当初は関西からの依頼が結構舞い込み、結構苦労したものだった。そんなこともあったり、その時点で零と泉が今どこにいるかわからなかったりした為兄弟への声かけが遅れ、東京に来てしばらくは3人で暮らしていた。その為変わらず3人で仕事をこなしていた。そしてやっと東京での暮らしが慣れた頃、所在のわかっている優一を迎えにいった。優一は別れた時が幼かった為家族のことを全く知らなかった。また新矢によって力を封じられていた為力のことも全くわかっていなかった。竹流はこのままの状態で優一にMoon Lightの仕事をさせるのは気が引けたが、いずれ使いこなせなければ大変なことになるかもしれない。そんなわけで優一に打ち明けたのである。もちろん優一は驚いていたし、どこか不安そうだった。そんなことを考えながら約2年半前の依頼を見て竹流は小さく笑った。
「この依頼からだな。優一兄さんが加わったのは」
竹流はそう言いながらその時のことを思い出す。ある会社のリサーチのためにその会社の幹部邸を、まだまだ力を使いこなせず何もわからない優一を補佐しながら、まずは見張りをし、次に潜入をしたのである。その時優一は誤って池に転落してしまい零と泉に助けられた。それが縁で零と泉と会うことができ、一緒に暮らしてほしいということを伝えられたのであった。結局依頼はきちんとこなしたが、少しハラハラだったのを覚えている。その後しばらく小さい仕事が続いたが、すぐに大きな依頼が出てきた。優一の担任の先生だった星野先生からの依頼である。この頃優一の力が目覚めかけていたもののまだまだ不安定な時期だった。しかし学校という空間の中でボディーガードをするのは難しいため、優一がその役を担うことになってしまった。それなのに結局は学校で大騒ぎになってしまい、みんな揃って学校に集まったのであった。とはいえ、この依頼のおかげで優一は使い方を覚え、普通の生活を送りやすくなった。そしてこの依頼以降は本当に兄弟、家族、といった感覚が強くなったように竹流は思っていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ