書。

□一枝の梅。
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「おはよう、イヅル」


そう僕に声をかけた市丸隊長。

いつもとなんらかわりはない。


仕事をしていることを除けば、そこにいるのはいつもと変わらない僕の大好…

じゃなくて尊敬している市丸隊長だった。


立ち止まったまま動かない僕を、市丸隊長は不思議そうに見つめていた。


「イヅル…?どしたん?具合悪いんか?」


貴方こそ熱でもあるんですか!?と、口から出かかった言葉を無理矢理飲み込み、


「いえ、だ、大丈夫です…;;」

そう答えて僕は副隊長席に座った。


生きているうちに(…もう死んでますけど)市丸隊長が仕事している姿を拝むことができるなんて…





――…市丸隊長が仕事してくれたら。


そう願った事は何度もあった。だから目の前の光景はとても喜ばしいもののはず…なのに。


喜ばしいや感動を越えて僕は寒気を覚えた程だった。


…市丸隊長の仕事をしてる姿程恐ろしいものは無いかもしれない…





座ったまではいいけれど、そのまま動かずに真っ青な顔をした僕を市丸隊長は今度は心配そうな目で見つめていた。

「イヅル…本当に大丈夫なん?顔真っ青やで?」



だから原因は貴方なんですよ!…と叫びそうになった。




「イヅルの分までやっといたるから、休んどき。」





頭の中で僕の中の、人に仕事を押し付けいつもサボっていた市丸隊長像のすべてがガラガラと音をたてて崩れていった。


自分から仕事を増やしている…

あの市丸隊長が…


「いや、あ、僕なら大丈夫です!本当に!!」


僕の声を無視して市丸隊長は僕の前に詰まれている大量の書類の山を自分の席へと持っていき、自分の着ていた白い羽織を僕に渡した。



「それ着て寝とき。」



…そして又、仕事を始めた。


僕は渡された白い羽織を握り締めて呆然とするしかなかった。


きっと阿散井君が朽木さんと結婚したとしても今程驚かないだろう。





…いつのまにか僕は、執務室のソファに市丸隊長の羽織を着て寝かせられていた。



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