キリ番小説(全統一)
□大海恵のスキャンダル
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杉さんは路肩に車を止めると窓を少し空けると私に断ってからタバコに火を点けた。
「うちの事務所で売れてるんは恵だけや。それは周囲も認めてる。けどな、今事務所は大赤字なんや。……それを操ってるんが、今宮の所属する事務所ってわけや…。」
杉さんは煙を吸い込み窓に向かい深く煙を吐いた。
「恵…。おまえテレビで全く今回の件について話してないやろ?」
「はい…。」
「なんでや?」
「それは…私が無理に否定すればまたあらぬ噂がながれる「それなんよ。」えっ!?」
私の言葉に杉さんは口を挟んだ。
「恵はえらいお人好しやし、自分より他人を優先する性格やしな。今回の件も相手の事務所に迷惑かかる思うたんやろ?」
「……はい…。」
「………今から言うことは老いぼれドライバーの戯言やと思うてくれ。………………早いことスキャンダルの誤解を解かな恵のアイドル生命が危ういで。」
「えっ!?」
杉さんはさらりと言うとタバコを消し窓を閉め車を動かした。
翌日。私はある決意をした。
それは…今宮さんのやったように公共の電波を使って誤解を解くこと。
そして…。裏でつるんでいた双方の事務所のことを全て話す。
ただ、それには……清麿くんの協力が必要だった。
「恵…。」
ティオが心配そうな声で私を呼ぶけど清麿くんのことを考えるとティオに応える元気さえ出ない。
ピンポーン
こんな朝早くに誰だろ?と玄関に向かうとそこには…
「ぅ…そ…。きよ…まろくん…。」
そう、目の前にいたのは清麿くんとガッシュくんだった。
ガッシュくんとティオはお互い挨拶を済ますと手を取り合って外に出た。
「……恵さん。」
「は、はい…。」
私は覚悟が出来ていた…。
清麿くんの口から別れの言葉が出ることを…。
なのに…
「な…んで、なんで抱きしめてくれるの?」
清麿くんは優しく私を抱きしめてくれた。
「俺…昨日恵さんの専属ドライバーに呼ばれたんだ。」
「杉さん…に?」
「あぁ…。恵さんの無実を必至に俺に伝えてきたんだ。そして教えられた。あのスキャンダルは相手の…今宮の一方的なでたらめなんだな。」
「…うん……うん!!」
私は嬉しかった。
頬に涙が伝うのがわかる。私は泣いていた…。
「きよ…まろくん…。」
「ん?」