夏夜月様の部屋
□逢魔ヶ刻のガッシュ!9話 「ウサギとアイドルと虫人間〜ついでに右手〜」
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今回は「ウサギ、モチノキ町へ」の恵サイド&園長が清麿を出し抜いた後の事件をお送りします。
今日も仕事が入った。スケジュール上は、明日も一日中園には戻れない。
まだ全部の動物の事を知らないのに……。清麿君に色々と教えてもらおうと思ってたのに……。
「恵ちゃん。次のスケジュールの内容なんだけど…」
ああ……清麿君や皆に会いたいな〜……。
「………」
「……?」
マネージャーが黙り込んでしまっている。
「ど…どうしたんですか?」
「…………め…恵ちゃん…後ろ…」
「え…!?」
震えるマネージャーの指差す方に振り返ると……。
「その“欲望”と“魔力”……解放しろ」
「!!?」
目の前には異様な存在が立っていた。
クワガタムシのアゴのような角が頭にあり、右腕に付いている爪や目は、カマキリのそれに酷似している。
背中にバッタの後ろ足のような飾りがあり、下半身が褐色の肌に黒い包帯が巻かれた“それ”は、危険な存在だと私は肌で感じ取った。
「………て…」
「恵ちゃん?」
「マネージャー!!早く逃げて下さい!!」
私は周りが驚くぐらいに大声をあげた。
「は、はい!!」
恵はもちろん、スタジオにいる全員が避難を始めた。
「チッ!」
虫人間は舌打ちをしながら周りを見渡した。と、警備員がすっかり腰が抜けてしまい逃げるに逃げられない状態だった。
「肝心なターゲットを逃したが…予定が大幅に変わった訳じゃないからな…。まあ良い…お前の持つ欲望と魔力(ちから)……。解放しろ」
「ひっ!!」
警備員の額に、自動販売機などにあるコイン投入口が現れた。
“そいつ”は一枚の銀貨を体から出すと…
チャリン!
投入口に入れた……。
すると、警備員の腹から、白い包帯まみれの人形が出てきた。
人形はスタジオに飾られた恵のポスターや写真を貪り始めた。
一枚喰らう度に人形の体内でシャラン…シャラン…と“何か”が満たされていく音が無人の(警備員はやっとの思いでその場を逃れた)スタジオに響いた……。
その頃。
清麿をまいた椎名はこれまた偶然に恵のいるスタジオに迷い込んでいた。
「う〜ん…なんもかもが面白!!」
途中、椎名は一枚のコインを踏んづけた。
「ん?」
拾ってみると、それは赤く輝き、鳥の絵が描かれていた。
と、そこへ…
「きゃ!!」
「ん?」
恵が椎名にぶつかってきた。
「え…園長!?なんでここに!?」
「大海恵…」
ペシ!
「!?」
なんと椎名はいきなり恵をぶった。
「お前飼育員の仕事はどした!?誰がいつ休んで良いなどと言ったあ―――!?」
ガクガクと揺さぶられたら喋れない…。
じゃなくて!!
「園長それよりも大変なんです!!」
「獣共の世話をそんなことだと!?」
いやそこまで言ってないから!
「あの…怪物が!!魔物がこの施設内にいるんです!!」
「何?」
椎名がふと前を見ると
「大海恵だな?」
「!!」
「?」
そこにいたのは恵が見た怪物とは違う、カマキリ100%の怪人だった。カマキリと人間が合わさったような顔は、まるで逢魔ヶ刻の動物が人間化した時の物に似ている。
実は、これは先程の魔物が警備員から生み出した人形が成長した姿なのだ。
「何じゃこのイカした顔は…♪」
椎名は面白そうと感じた物に惹かれるのは分かっているけど……。
「園長、みとれてどうするんですか!?」
参ったな〜もう…。今ここにティオはいないし……。
「来い!!」
そう言うが早いか、カマキリ男は恵の腕を力任せに引っ張った。
「いた……!!」
「ラビットピース!!」
「グアッ!!」
椎名はカマキリ男にラビットピースを叩き込んだ。