短編小説
□貴方と見上げる五月晴れ
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「ずっと仕事で大変だったけど」
「うん」
「お前と一緒にいられたから、嬉しかった」
胸が苦しくなる。
頑張り過ぎる彼が愛しい。
彼の負担を、ちょっとでいいから私に分けて欲しいの。
こんな機会めったに無い。
だから、佐伯くんとどこかに遊びに行きたかった。
ちょっと遠出したりするのもいいかなって。
そう思ってた。
けど、彼が喜んでくれるなら、バイトだけだった昨日までも、そんなに悪くないように思える。
後は。
彼の疲れが少しでも和らげばいい。
彼を倣って私も白砂へと身をまかす。
「砂まみれになるぞ」
「いいの。気にならないもん」
さっきと逆のやり取り。
真っ青な空にふわふわの雲。
そして少し強めの光を放つ唯一つの丸。
「五月晴れだな」
「うん」
右手に感じる熱。
私よりもずっと大きな手が優しく握り締めて来る。
私はぎゅっと彼の手を握り返した。
「なんだよ?」
不思議そうに聞いてくる佐伯くんに、私は本気で返す。
「佐伯くんの疲労を私に移してるの」
「はっ?」