短編小説
□貴方と見上げる五月晴れ
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「うんっ」
自然と綻ぶ顔に、佐伯くんは手を動かしながら笑った。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「佐伯くんだって!」
「ウルサイ」
すげなく言われても気にならなかった。
「あ〜!!疲れたっ」
そう叫ぶと、服が砂にまみれるのを気にせずに、佐伯くんは白い絨毯の上に寝転んだ。
「もう、髪に砂ついちゃうよ?」
「いいんだ。そんなの気にならないよ」
浜に降りて来た私たちは、彼の作ってくれたサンドイッチでお腹を満たすと、のんびりとした時間を満喫していた。
耳に入るのは静かな波音だけ。
昨日までの浜辺とは違い、今日は人影もほとんど無かった。
「連休最後は、みんな家でのんびりしたいんだよ」
私の疑問を読んだように、彼が教えてくれる。
「遊びに行くのは昨日までってこと?」
「そう」
「私たちは昨日まで働いてたけどね」
ちょっと嫌味っぽかったかな?
伺うように右隣に目を落とすと、掌で光を遮った彼が、目を細くしてこちらを見ていた。
「なんかさ」
「え?」
佐伯くんがはにかんだ様に笑う。
その面には疲れの影が見えて…。