短編小説
□貴方と見上げる五月晴れ
6ページ/10ページ
「おはようござ…」
「遅いっ!!」
お店の扉を開けた瞬間、佐伯くんの声が飛んで来た。
チョップの刑を免れるために、私は慌てて頭を下げる。
「ごめんなさいっ!!すぐに用意するからっ」
「いいよ。そのままでいいから、こっち来て手伝えよ」
彼の言葉に顔を上げた私は、アレと首を傾げる?
いつもならこの時間には完璧にセッティングされた店内なのに、まだ何一つ用意されていない。
それどころかカウンターの向こうにいる彼は、珊瑚礁のユニフォームでは無く私服だった。
「佐伯くん?」
「ほら、いいから」
「う、うん」
何がなんだかサッパリだったけど、佐伯くんが楽しそうに微笑むから。
小さな厨房で彼が作っていたのはサンドイッチ。
厚切りのバゲッドにハム、レタス、チーズにトマトが綺麗挟まれている。
「うわっ。美味しそうっ」
「だろ?あ、サーバーにコーヒー入ってるから、それに入れて」
二つ出されたタンブラーを指差されて、私はだんだん理解して来た。