短編小説
□貴方と見上げる五月晴れ
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「オーダー、ホット1モカ1です」
「はいはい」
クリスマスみたいなイベントじゃ無いから、お客さんなんて来ないんじゃないのかな?
そう思っていたのに、海辺に散歩しに来たカップルや家族連れで、珊瑚礁はほぼ満席状態だった。
佐伯くんの言う通り『稼ぎ時』。
思わずため息が出ちゃうよ。
「お嬢さんには悪いことをしたね」
「え?」
マスターが手を動かしながら苦笑いをする。
しまった。
ため息吐いたの気付かれちゃったかな。
「せっかくのゴールデンウィークだって言うのに、バイトに入ってもらって」
「ぜんぜん平気ですよ。元々特に予定も入ってなかったんです」
慌てて言った言葉は半分ウソで、半分ホント。
一緒に出かけたかった相手はここで働いているんだから、私一人じゃ予定すら埋まらない。
だから、予定が無いのはホント。
けど『ぜんぜん平気』はウソ。