STORYS

□護衛者『交渉』
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7月21日



訳が分からないお爺さんの話を聞くために、私たちは喫茶店へ入った。


暑いのに、飲む気がうせるようなホットコーヒーを出されて、無言の状態。
私は、悠々とコーヒーを飲んでいるお爺さんの姿をずっと見つめていた。



だが、それも終わりのようだ。


「夏休みの間、ある人を護衛してくれませんか?」



口に運んでいたティーカップをテーブルに戻し、優雅そうな目付きで私をみて、駅で言われた言葉をもう一度言われた。



「あの、唐突すぎます。私、貴方とは会ったばかりですし‥」


断るのも当然。
良く考えれば、この人は不審者だ。


「貴方しかいないんです。」


必死にお爺さんは言う。
だんだんしつこくなってきた。


「勧誘なら他をあたってくれませんか?私、金ないんで。」


テーブルには口を付けていないホットコーヒーの隣にコーヒー代を置いて席を立とうとした。


「いえ、勧誘ではありません。だから護衛です。遅くなりましたが、こういうものです。」


そういいながら、お爺さんは名刺を丁寧に渡してくれた。


遅いよ。と思いながら、名刺を受け取って観た途端固まった。
いや、固まるのは当たり前だった。


ちょっ‥ちょっとちょっと‥この人ってお偉いさんじゃない?



筧グループ 会長

筧 史彦(カケイ フミヒコ)―‥



有名な筧グループ。
疎い私でも知っているのだからきっと大企業だろう。

多分‥小さい子も‥―、いや、難しいから知らないか。


そういえば、最近TVに出てきたっけ?
確か‥事件かなんかだったような‥。


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