捧げもの
□LAST MAIL
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その日は湿っぽかった。
じとじとした空気が教室を包んで、俺はまとまらない髪の毛をいじる。
ちっとも面白くない国語の授業中。
ケータイを見るとメールが1件来ていた。
(侑士から・・・・・か)
内容はおそらく・・・・予想できたけれど、どうせ暇なんだ、と片手でボタンを操作する。
【堪忍。今日昼飯一緒に食えんくなった】
・・・・やっぱり。
侑士が跡部のことが好きだと打ち明けてきたのは数日前。
そして、侑士はここ3日ほど前から俺とじゃなくて跡部と飯を食べることが多くなった。
・・もう、いちいち言ってこなくてもいいんだけど。
そう思うけれどやっぱり俺は侑士がいちいち俺のためにメールをしてくれる、侑士が俺の為に時間を割いてくれる、そのことが嬉しくてメールを断ることはしなかった。
【りょーかい。しっかりやれよ】
送信ボタンを押した後、どっと疲れる。
返信メールは、表面上は、『いい友達』を演じて。
内心は跡部への嫉妬に満ちていた。
決して表に出してはいけない感情。
この感情を表に出さなければ俺は、少なくとも侑士の『友人』として一番でいられる。
これでいいんだ・・・・・・握り締めたケータイの画面が、虚しかった。