捧げもの

□LAST MAIL
1ページ/6ページ



その日は湿っぽかった。


じとじとした空気が教室を包んで、俺はまとまらない髪の毛をいじる。






ちっとも面白くない国語の授業中。

ケータイを見るとメールが1件来ていた。




(侑士から・・・・・か)




内容はおそらく・・・・予想できたけれど、どうせ暇なんだ、と片手でボタンを操作する。






【堪忍。今日昼飯一緒に食えんくなった】





・・・・やっぱり。






侑士が跡部のことが好きだと打ち明けてきたのは数日前。


そして、侑士はここ3日ほど前から俺とじゃなくて跡部と飯を食べることが多くなった。





・・もう、いちいち言ってこなくてもいいんだけど。




そう思うけれどやっぱり俺は侑士がいちいち俺のためにメールをしてくれる、侑士が俺の為に時間を割いてくれる、そのことが嬉しくてメールを断ることはしなかった。







【りょーかい。しっかりやれよ】




送信ボタンを押した後、どっと疲れる。







返信メールは、表面上は、『いい友達』を演じて。



内心は跡部への嫉妬に満ちていた。



決して表に出してはいけない感情。





この感情を表に出さなければ俺は、少なくとも侑士の『友人』として一番でいられる。




これでいいんだ・・・・・・握り締めたケータイの画面が、虚しかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ