捧げもの

□すすり泣き
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プルルルルル


プルルルルル








深夜だというのにけたたましく鳴り響く電話。


目覚まし時計の時刻を見ると、丁度1時をまわったところ。



母かもしくは姉が出るだろうと高をくくっていたけれど、もう電話がかかってきて1分以上も経つというのに誰も出る気配はない。
きっともう熟睡しているのだろう。


母を起こすことも考えたが、その手間よりこの電話に出た方が早いと思い、俺はベッドから出た。



片足を布団から出すと外気にさらされ、ひんやりとした感触。

急に立ち上がると一瞬立ちくらみに襲われる。




頭に手をあて、頭痛がおさまるのを待って、俺は受話器へと向かった。





深夜の家に、ぺたりぺたりとはだしでフローリングを歩く音は、何だか少し不気味だ。




この電話のコール音ではきっと、電気屋の仕事用の電話ではなく、家用の電話だろう。






まだ眠い瞳をこすりつつ階下へと歩をすすめると、電話の音は突然ぴたりと止んだ。





・・・・・・何だよ。




こんな非常識な時間帯に、2分以上も電話を鳴らし続けやがって・・・・・・全く持って迷惑だ。







そう思いつつも、せっかく階下へ降りたのだからついでに麦茶を飲むことにした。





コップにお茶を注ぐ音と、時計の針が動く音のみが響く。

ガラスに映る電化製品が並ぶ家の中は自分の家ながら少し不気味だ。




お茶を飲み終えると、少しひやりとした空気が漂った。










プルルルル


プルルルル








そんなとき、またけたたましくも電話のベルが鳴った。



幸い、今度は電話は目の前にある。



ディスプレイには『非通知』という文字が点滅している。

俺は少し躊躇して、ごくり、と唾を呑んでから受話器をゆっくりと取った。






「・・・・・・はい、・・・・・・・・・もしもし?」


こんな時間にかけてくるような奴だ、きっとろくな奴じゃないに違いない

俺の声には不審な色が浮かんでいた







「・・・・・・ひっく・・・っく・・・・・・」

「・・・・・・もしもし?どなたですか?」



受話器から聞こえてきたのは、赤ん坊とも思える『すすり泣き』。






やっぱりろくな奴じゃなかった。


一応対応はしてみたけれど、相変わらず電話の相手は泣き止む様子を見せない。



だんだんその泣き声に苛立ってきた。

明日は学校だってあるし、俺はそんなに暇じゃない。





「もしもし?切りますよ?」

「・・・・・・・・・っく・・・」





ガチャリ




受話器を置くと俺は深いため息をついた。



・・・・・・・・・なんだったんだ、今のは。
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