捧げもの
□雨恋。
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「何か、あったんですか。」
「・・・・日吉、俺さ。」
先輩は一瞬躊躇したが、口を開いた。
「 」
ザーーーーーーー
降り続く雨の音で、俺は先輩の言葉を聞き取ることができなかった。
「・・・・え?」
「・・・や、聞こえなかったなら、いい」
先輩は、そのままコートを出て行った。
俺も呼び止めることはなかった。
今、俺達は二人で一つの傘に入っている。
先輩が小柄だからか不思議と狭い気はしない。
俺達は会話少なに歩いていた。
先輩は、どこか物思いにふけっているような横顔を俺に見せていた。