バ ト テ ニ
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ジャッカルの手に握り締められたもの、それはガムの包み紙だった。
包み紙には、俺の字で『初勝利!このまま突っ走れ!』と書いてある。
初めて俺たちのダブルスが勝ったとき、二人で何か記念に残そうと書いたものだった。
俺のポケットにも、ジャッカルの字で『初勝利。これからもよろしくな。』と書かれている包み紙がある。
・・ジャッカルは俺のことを嫌ってなんていなかった。
あのときジャッカルは誰かの気配に気づいたんだ・・・・それで、俺を逃がそうとして。
ジャッカル、つらかっただろ。
お前人に「迷惑」だなんて言ったことなさそうだから。
「ジャッカル・・・・ごめん。」
初めてジャッカルに謝った気がする。
俺はいつも自分のしたことを無理やり正当化していたから。
でも今回ばかりは。
あのとき、ジャッカルの表情を見ていれば。
もっと注意をはらっていれば。
無理やり一緒にいることを選んでいれば。
ジャッカルは死ななくてすんだ・・・・・後悔ばかりが押し寄せてまた涙が滲む。
「お前・・最後まで、優しすぎだろぃ・・・・・ジャッカル・・・!!」
俺は泣いた。
ジャッカルの思い出を忘れたくて、ジャッカルとの楽しい思い出が辛すぎて。
でも、涙を流せば流すほど思い出は鮮明に蘇り俺は更に涙を流した。
思い出の中のジャッカルは笑っていた。
何がそんなに面白いのかというくらいに。
ジャッカルはこちらを見ると、「ブン太も笑え。いつもふてくされた顔してると、天国に行けねぇぞ。」と言った。
俺が「関係ないだろ」と言ってふてくされると「笑った方がいい。俺、天国でもブン太とダブルスやりたいからな。」
ジャッカルは、笑ってそう言った。
「笑ったら・・・・ほんとにお前のトコに行けるのか・・・・?」
無理やり、笑う。
涙で顔がぐしゃぐしゃで、歪んだ笑顔だったけれど。
俺は笑う。
笑って、笑って、いつか笑顔で会えるように。