バ ト テ ニ

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それを見ると同時に俺は走り出した。

目からは涙が流れて、頭の中ではジャッカルとの思い出が流れていた。




初めてダブルスを組まされたとき、何でコイツと。と思った。

でも、ジャッカルは優しく笑って、テニスでも俺のフォローをしてくれた。

ジャッカルのおかげで、俺たちダブルスは勝ち進んでこれたんだ。

俺が他人を悪口を言っていると「見た目で判断するのはよくない」と注意してくれたし、ジャッカルが他人のことを「迷惑」だなんて言っていたことを聞いたことがない。



そのジャッカルに迷惑だなんて言われるなんて・・・俺、よっぽどのことしたんだな・・・。



言ってみれば俺とジャッカルは正反対。

教室でも、俺は自ら誰かに喋りかけに行くけど、ジャッカルはただ机に座っているタイプ。

それでもジャッカルの机の周りはいつも賑やかになる。

やっぱりジャッカルの人の良さがにじみ出てるんだと思った。



確かに、ジャッカルをからかったりとか、こんな性格だから試合でポイントを取られたらジャッカルを激しく責めたりした。

でも、ジャッカルがそれをそんなに重荷に思っているなんて・・・・



絶対的な信頼を置いていたパートナーの裏切りは、俺にとって大きかった。

俺は初めて「あたりまえ」の大切さに気づいた。

いつもあたりまえのように隣りで笑っていたジャッカル。

見えないところであたりまえに俺を支えてくれていたジャッカル。

ジャッカルの存在は俺にとって必要不可欠なものになってしまっていた。



脳裏に焼きついて離れないのはさっきの冷たいジャッカルの表情、そして昔のジャッカル。

あまりに正反対で、しかもその原因は俺だと思うとやりきれなくて、涙が出た。

声を出さないでおこうと思えば思うほどに涙は流れてきて。



もう俺がこの世で最も信頼できる人物は、いない。

どうしようもない欠落感が俺を襲っていた。
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