バ ト テ ニ
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右手をゆっくり挙げて指に力を込める。
長太郎は、嬉しそうに笑う。
ほぼ同時に、鼓膜が破れそうな銃声と共に飛び出した鉄の塊。
塊は長太郎の眉間を貫く・・・ゆっくり・・・ゆっくりと。
同じようにゆっくりと長太郎は倒れた。
あとに残ったのは、顔の原型を留めず右足のない人の残骸と、血のシャワーを浴びた俺。
俺はただ、生暖かい血の感触を感じながら呆然としていた。
頭の中ではまだあの瞬間が流れている。
俺の手から放たれた黒い塊が、長太郎の皮を突き抜け、肉を裂き、命を絶った瞬間。
体はカタカタと震えていた。
何故、こんなに怖いんだろう。
あのとき、もう覚悟を決めたはずなのに。
どうして、こんなにも涙が流れる?
どうしてこんなにも今になって悔やむ?
俺がやったことは、正しくなかったのか?
跡部の言葉を思い出す。
『いつでも、自分が正しいと思ったことを貫け、いいな。』
「無理だよ・・跡部、宍戸、侑士。」
泣き崩れる俺の傍には誰も居なくて。
傍にあったのはただ一つ。
冷たく光る銃だった。
「殺すことが正しいのか、殺されることが正しいのか、俺自身が正しいのかなんてそんなこと、解んないよ。」
俺が選んだ最期の選択。
それは死だった。