バ ト テ ニ
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「・・長太郎・・・・!」
俺がとてつもなく驚いたのは人物が長太郎だったからではない。
長太郎の右足がごっそりもぎ取られていたからだ。
切り口は表現できないほどグロテスクで恐ろしく、長太郎の這った跡には川のように血の跡がついていた。
「向・・・日先輩?」
長太郎は俺に向かって何故か微笑んだ。
「どうしたんだ、長太郎。」
俺は負傷した長太郎に少し同情はしたが、先ほどの決意を揺らがせるつもりはなかった。
情けはいらない、殺すんだ・・・・。
俺は銃を握り締めた右手に力を込めた。
「先輩。俺、誰かに攻撃されて・・・気がついたら下半身がなくなってて、これだけ血が流れてるのに全然死ねなくて・・・・」
長太郎はすがるように俺を見た。
俺はそんな長太郎をただ見下ろすだけだった。
「向日先輩。俺を殺してください。」
「?!」
俺は最初から長太郎を殺すつもりだったけど、この言葉には驚いた。
俺は生きたい、と願っているのに長太郎は死にたいと願っている・・・。
「どうせ優勝したって皆はいないし、この足じゃテニスもできないから・・・俺、このまま死ぬのを待つよりかは尊敬してた先輩に殺されたいです。」
鳳はそう言って少し自嘲気味に笑った。
何故コイツは殺してくれ、だなんて頼めるのだろう。
コイツだって、生き延びたくて今までゲームを生きてきたんじゃないのか?
どんな手段を使っても生き残りたかった、そうじゃないのか?
コイツは、死ぬのが怖くないのか?
そんな疑問が俺の頭に浮かぶ。
俺はその疑問を問いかけるかのように一層銃を強く握り締めた。
握り締めた銃は、俺に答えなんてくれなかった。
返ってきたのは、ただ冷たい感触。
長太郎を見下ろすと、目を潤ませて俺が引き金を引くのを今か今かと待っている。
最早、俺に選択肢などなかった。